2022年9月5日
ポイント
●う蝕の原因菌「ミュータンス菌」により肺の血管炎症が誘導され、がん転移が増えることを解明。
●ミュータンス菌は血管内皮細胞間接着分子の発現を低下させ、血管の透過性を亢進。
●がん患者の口腔清掃状態を良好に保つことは、転移予防のためにも重要であることを示唆。
概要
北海道大学大学院歯学研究院の樋田京子教授、間石奈湖助教、長谷部晃教授、北川善政教授、同大学院歯学院博士課程のユ リ氏、北海道大学病院の樋田泰浩准教授らの研究グループは、う蝕の原因細菌によって、遠隔臓器の血管炎症と血管の透過性亢進が誘導され、がんの転移が増加することを解明しました。
口腔内細菌であるStreptococcus mutans(S. mutans、ミュータンス菌)は、歯周炎などがあると血液循環に侵入して様々な臓器に影響を及ぼすことが報告されてきました。
研究グループは、これまで血管炎症が、がん転移を促進させることを研究してきましたが、今回ミュータンス菌が血管の炎症を誘発し、細胞間接着分子(ICAM-1)の発現亢進によりがん細胞と血管の接着を増やすこと、さらに血管内皮細胞間接着分子(VE-cadherin)の発現低下をもたらし血管の透過性亢進させることを示しました。マウスを用いた転移の解析において、ミュータンス菌が血中に循環している状態では、肺血管の炎症性変化がおこり、がん細胞の肺転移が増加することが示されました。本研究により、がん患者の口腔衛生状態を良好に保つことはがん転移の抑制に重要であることが示唆されました。
なお、本研究成果は、2022年8月23日(火)公開のCancer Science誌に掲載されました。
論文名:The oral bacterium Streptococcus mutans promotes tumor metastasis by inducing vascular inflammation(口腔内細菌Streptococcus mutansは、血管炎症を誘発し転移を促進する)
URL:https://doi.org/10.1111/cas.15538
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